胃潰瘍を探る!〜治療〜

東京の松江です。

胃潰瘍の治療について。

ご存じのことと思いますが、近年の治療の主流は「薬物治療」です。

1.薬物療法:
 
「プロトンポンプ阻害剤」や「H2受容体拮抗剤」といった「制酸剤」で胃酸を抑えることで、潰瘍を一旦、ほぼ治癒させることはできます。
しかし、近年は内服を中止すると再発するケースが多く、結局は維持療法として薬を長期にわたり服用している場合が多いと思います。
「制酸剤」の他に、胃粘膜の血流をよくする目的で「胃粘膜保護剤」などを併用することもあります。
(内服薬で治療する場合は「制酸剤」と「胃粘膜保護剤」と併用する方が、ダンゼン治りが良いという印象です)
現在、潰瘍再発の主たる原因がピロリ菌感染であることが判明し、胃酸を抑えるだけの治療は対症療法であると考えられています。


2.ヘリコバクターピロリ除菌療法:

ピロリ菌を除菌することで潰瘍再発が劇的に少なくなること判ってからというもの、もはや除菌こそが潰瘍治療の根本的治療と位置づけられています。
除菌の方法としては、“菌”なだけに「抗生剤」を用います。
「アモキシシリン」と「クラリスロマイシン」という2種類の抗生剤。
これに、酸分泌抑制剤として「ランソプラゾール」もしくは「オメプラゾール」をあわせて用います。
1週間内服し、約8週間後に尿素呼気試験で除菌の成否を判定するのが一般的です。
ピロリ菌の中には耐性菌といって抗生剤の効かない菌をみられ、除菌成功率は約80%です。
除菌の副作用として下痢、味覚異常、発疹などがあります。
軽症の場合は内服を継続しますが、まれに日常生活に支障をきたし中止を余儀なくされることもあります。
また、腎障害や薬剤アレルギーのある方、妊産婦などは除菌治療は控えるべきです。
ただし、除菌治療が成功しても、日常生活の不摂生は、当然胃に負担をかけます。
やっぱり、喫煙・塩分の多い刺激物・香辛料・過度の飲酒を控えることが必要です。


3.外科的治療:

「H2受容体拮抗剤」の登場以来、外科的手術は激減しました。
(昔は、胃潰瘍で胃を部分ないしは全部を切除することは多かったのです)
現在では、胃潰瘍で穴があいてしまった「穿孔」例で手術になるケースがほとんどです。
大量出血や内視鏡での止血困難例でも手術になる場合はありますが、近年は、出血の原因血管の血流を止める、「血管塞栓術」を行うことで手術を回避する工夫もなされています。


4.その他:

NSAIDsなどの薬剤が原因の場合、薬剤を中止することが原則です。
仮に、継続しなければならないにしても、必要最小限の使用にとどめるべきです。
その上で、上記の「プロトンポンプ阻害剤」、「H2受容体拮抗剤」による治療を行います。

以上、治療についてまとめてみました。


ホントは、説明に言葉だけでなく図を多用できたら良かったのですが、転用は何かと難しいので、割愛させていただきました。

また、別のテーマで特集してアップしたいと思います。

投稿者 keiseikai : September 1, 2006

胃潰瘍を探る!〜診断〜

東京の松江です。

胃潰瘍の診断について。

日頃の診察では、おなかの触診で「胃潰瘍にチガイない!(キラーン!)」と判ることがあります。
胃炎などとは、痛がり方がちがうので。
あとで検査してみたら、やっぱり潰瘍がありました!って確認できることが度々あります。


では、検査は何をするのか?
以下に、紹介します。


1.胃X線検査(消化管造影検査):
 
いわゆる「バリウムのむ」ってヤツです。
胃癌検診でなじみの深い検査法で、白色の液体であるバリウムを飲んで、胃の変形や凹凸を観察しながら、X線を用いて撮影する検査です。
活動期の潰瘍は、胃壁の外に突出したバリウムの溜まり像(=ニッシェ)として描出されます。
瘢痕期の潰瘍は、ひきつれ像や伸展不良像として観察されます。
検査の間は、指示に従って自らが動かなければならずチョット忙しいですが、飲むのは液体なので嚥下の苦しさはありません。
ただ、検査そのものの弱点は、すでに胃に穴があきそうなほど重症なケースには実施しにくいです。
また、変形が乏しい場合や粘膜の色調などはわかりませんよね。

そこで出てくるのが・・・・・

2.上部消化管内視鏡検査:
 
いわゆる「胃カメラ」ってヤツです。
内視鏡検査は直接、潰瘍病変を確認し診断できます。
白苔の性状、再生上皮の有無、周囲粘膜の浮腫の状態などにより活動期、治癒期、瘢痕期に分類しています。
また、胃潰瘍では悪性病変との鑑別が大切であり、特に早期胃癌との鑑別は困難なことも少なくありません。
内視鏡検査では同時に生検を行うことができ、その病理組織を調べることで診断が可能です。
検査中は横になっているだけですが、内視鏡を飲み込んでゲップをとめてないといけないのが、結構大変なところ。
最近では「鼻から入れる内視鏡」があって話題にもなっていますが、まだ、一部の医療機関にしか普及していません。

検査は大変ですが、もし潰瘍部分から出血していた場合は、内視鏡で止血をすることもできます。
そういう点では、便利です。


以上、診断の方法についてまとめてみました。

では、また明日。

投稿者 keiseikai : August 31, 2006

胃潰瘍を探る!〜症状〜

東京の松江です。

胃潰瘍の症状について。

腹痛 ― 上腹部痛が代表的です。

高さとして、みぞおちからおへその上あたりまでが多いです。
(下腹部は、ほとんどないと思います)

他に、
「背部痛」

「食欲がない」

「体重減少」

「吐血」(真っ赤な鮮血からコーヒー残渣様の真っ黒まで、“色々”です)

「タール便」(胃からの出血が、腸を通過する間に酸化されて泥状の黒色になるため。極めて大量に出血した場合には赤みのある便になります)

「胸やけ」

「もたれ感」

などなど多彩です。

検診の発達した日本では、全く症状のなくて、偶然発見されることもあります。


「食後に腹痛が増悪する場合は胃潰瘍」
「食前に増悪する場合は十二指腸潰瘍」

などと学生のときに教わりましたが、実際に患者さんを診ると“そうとは限らない”というのが印象です。


さて、胃潰瘍も重症化すると、起こってくるのが2次的な合併症です。

まず、なんといっても「出血」。

そして、「穿孔」です。

「出血」した場合には、2次的に頻脈、冷汗、血圧低下、気分不快、吐血、下血などの症状が出現します。

「穿孔」の症状としては、持続性の非常に強い腹痛、圧痛、反跳痛(おなかを押し、離したときに痛みが強くなる)、筋性防御(おなかを押すとカチカチに硬い)、発熱などがあります。
もう、こうなると胃の内容物が腹腔内に漏れ出てますから、腹膜炎をおこしています。
この状態が推測されたら、即、手術です。

以上、症状についてまとめてみました。

では、また明日。

投稿者 keiseikai : August 30, 2006

胃潰瘍を探る!〜原因〜

東京の松江です。

今日は原因についてです。

昨日も書きましたが、胃潰瘍における胃粘膜障害のポイントは、「胃酸の分泌」と「胃粘液の分泌」とのバランスです。
これが崩れることで、胃の粘膜が負けて障害を受けてしまうのです。

起こる理由として、急性の場合と慢性の場合では、いささか異なります。

それぞれについて説明してみます。


“急性”胃潰瘍の場合。

1.消炎鎮痛剤(NSAIDS)の服用
非ステロイド系消炎鎮痛薬 (Non steroidal anti-inflammatory drugs)と呼ばれる、実は、よくみなさんが服用されるジャンルのお薬です。
有名なところでは、商品名:バファリンやセデスなど。
これらのお薬では、シクロオキシゲナーゼ-2という酵素を阻害し、胃粘膜の重要な防御因子であるプロスタグランディンという物質の産生を抑制してしまいます。
そのため、胃粘液は出にくくなって粘膜障害が起きてしまう、というわけです。
もっぱら、長期にわたって服用し続けると起きます。

2.精神的なストレス
精神的なストレスが加わると、迷走神経という部分が刺激され胃液の分泌が上昇します。
加えて、精神的なストレスがかかると交感神経が働き、胃の血管が締め付けられるため血流が悪くなります。
必要な酸素や栄養が行き渡らず、胃粘液などが補えなくなってしまいます。
胃粘膜に対する、「攻撃因子の増強」と「防御因子の減弱」が生じるわけです。
で、胃粘膜が障害を受ける、と。

3.喫煙
喫煙は、上記「ストレス」の肉体版だと思ってください。ニコチンによって、胃の血管が締め付けられるため血流が悪くなります。
おのずと、必要な酸素や栄養が行き渡らず、胃粘液などが補えなくなってしまいます。
また、喫煙による交感神経の作用で消化管の蠕動は亢進して、胃の中に食べ物がないときでも胃液が分泌されやすくなります。
やはり、「攻撃因子の増強」と「防御因子の減弱」の状態が生じるわけです。

そのほか、アルコールの飲みすぎなどがありますが、最近の調査では、発生頻度で喫煙に抜かれてしまったようです。

“慢性”胃潰瘍の場合。

ほとんどが「ヘリコバクターピロリ菌」によるもの、と考えられているようです。
(発見したオーストラリアのドクターがノーベル医学賞を取って更に有名になりました)
ピロリ菌に感染すると、ピロリ菌が作り出すさまざまな物質によって、胃粘膜に炎症を起こします。
炎症を起こした部分に、さらに胃酸やペプシンなどの刺激が加わると、胃の粘膜に欠損が生じて胃潰瘍になるわけです。

しかし、ピロリ菌に感染した人すべてが慢性胃潰瘍になるわけではありません。
たとえば、日本人の中高年では70〜80%の人がピロリ菌に感染していると考えられていますが、その中で慢性胃潰瘍にまで進行するのは約2〜3%の人だけです。

また、ピロリ菌に感染したらすぐに胃潰瘍が発症するわけでもありません。
ピロリ菌の感染は、多くの場合、幼少時に起こると考えられています。
ところが、慢性胃潰瘍の発症は中年以降、特に50歳代に多く見られます。
つまり、感染から胃潰瘍の発症までには、数十年かかっているということになります。
この間にピロリ菌感染によって、まず慢性胃炎が起こり、そこから一部が萎縮性胃炎へと進行。
その中のさらに一部が慢性胃潰瘍へと進行する、とされています。


ほかに、慢性疾患に対するお薬 ― 血圧やコレステロールのお薬などで胃酸が増えて緩徐に胃潰瘍を形成することもあるようです。
(NSAIDSとは機序が異なるし、慢性胃炎を経るので、どちらかといえば“慢性”の原因と考えられます)


以上、原因についてまとめてみました。

では、また明日。

投稿者 keiseikai : August 29, 2006

胃潰瘍を探る!〜はじめに〜

東京の松江です。

きのう、当院の消化器のに関する情報をアップしました。

そのついでと言っては何ですが、消化器の代表的な疾患、「胃潰瘍」について書いてみようと思います。
(自分の勉強のためにも、いろいろ調べながら書いてみます)


今日は、「胃潰瘍の概要」について。


胃潰瘍(いかいよう)は、胃から分泌される胃酸と、胃酸から胃壁を守る粘液の分泌とのバランスが崩れ、胃酸によって胃粘膜が傷つき崩れた状態になります。

胃粘膜が「局所的に掘れてしまう」状態 ― これが「胃」「潰瘍」です。


代表的な自覚症状は、「みぞおちあたりの痛み」や慢性的な「吐き気」など。

潰瘍部位に大きな血管が存在すると、その血管が破れて出血を起こすことがあります。
ツウな人(医者)は、“潰瘍底に露出血管がある”などといいます。
露出血管が静脈だと、まだ良いのですが、動脈だと大変です。
たいがい、吐血します。

重度の胃潰瘍の場合は、胃壁の穴が胃の外側にまでつながってしまう場合もあります。「胃」「穿孔」といいます。

胃潰瘍の症状や治療法の多くは、十二指腸潰瘍にもあてはまるため、双方を総称して消化性潰瘍と呼ぶこともあります。

教科書的には、「十二指腸潰瘍は若者に多く」「胃潰瘍は中年以降に多い」などとなっています。

が、若者が胃潰瘍にならないわけではありません。なります。
年配の方で、十二指腸潰瘍の人もいます。


近年、定説になっているのは、

「ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)保有者は、非保有者に比べて胃潰瘍の発症率が高い」

ということです。

ピロリ菌は、胃癌の危険因子でもあるんですよね。
(潜在的に、多くの人が持ってるらしいです。そのへんは、明日の記事を!)

と、以上が概要です。

今日はこの辺で・・・。

投稿者 keiseikai : August 28, 2006